ニトウコラム
生活意識調査2023年ゆとりある暮らしは出来るのか?
最近の暮らしにゆとりを感じていますか?
世間では、新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことで、コロナ禍から通常の生活様式へと戻りつつあります。では、本当にコロナ前の状況へと戻るのでしょうか。それは、一人ひとりの人の感覚とも考えられます。
人は、それぞれ考え方も行動も違うため、多くの人が持つ生活意識をまとめることで状況は見えてくると考えられます。今回は、最近の暮らしにゆとりを感じられるかどうかについて、日本銀行が公開する「生活意識に関するアンケート調査」の結果から考察してみました。
客観的な世論調査の結果からゆとりは感じられるでしょうか。また、「ゆとりある暮らしをおくるには、どのような課題があるのか」を追求してみましょう。アンケート調査結果に興味ある方は、ご一読してみてください。
目次
生活意識に関するアンケート調査とは
日本銀行情報サービス局が公開している「生活意識に関するアンケート調査」では、いくつかの項目に分けて、生活意識の調査をしています。生活意識のアンケート回答に参加した対象者は、全国の20歳以上の個人4,000人です。参照元:※1
全国の20歳以上の回答者は、現在の生活をどのように受け止めているのでしょうか。
景況感についての調査結果
ビジネスを行う者同士があいさつ代わりに交わす言葉で、「景気はどう?」などがあります。日本銀行によれば、景況感は景気の現状判断や先行き判断のことと定義しています。出典:※2
景況感が良い状態は、企業側としては売り上げが伸びている状況です。景気が良いから仕事も忙しくなり、職場も活気づいてきます。その職場で働く従業員の必要性も高くなるでしょう。
出来高制の給料形態であれば、給料アップも期待できるため、従業員のモチベーションアップにもなります。
逆に景気の悪いときは、企業の業績も悪くなっていることから感じるのかもしれません。仕事がないと、先行きが不安になって気分も落ち込んできます。それが原因で人間関係も悪くなることも考えられます。
出来高制の給料の場合は、売上が立たなければ給料も上がりません。景況感は、あらゆる立場の人に影響をおよぼします。日本銀行の調査では、2023年5月~6月にかけての景況感が1年前より改善していると示しています。
現在を1年前と比べた景況感
良くなったと感じる | 変わらないと感じる | 悪くなったと感じる | |
2022年12月の景況感 | 5.2 | 27.1 | 67.0 |
2023年3月の景況感 | 6.8 | 28.8 | 63.9 |
2023年6月の景況感 | 13.7 | 36.3 | 49.6 |
※単位(%)※出典:※1(図表1参照)
この結果は、1年前がコロナ禍で娯楽やレジャーなどに自粛が影響していたとも考えられるでしょう。新型コロナウイルス感染症の5類移行で集団活動も活発となりました。コロナ前の生活様式を取り戻す活動が景気への好影響になったかもしれません。
ただし、「良くなった」や「変わらない」と感じる人の割合は、改善されているとは言え、「悪くなった」と感じる人の割合は49.6%と半数を占めた状態です。景況感に対して悪いイメージを持っている人は一定数いることが理解できます。
つづいて、1年後の将来に対して感じる景況感は、次のとおりです。
1年後を現在と比べた景況感
良くなると感じる | 変わらないと感じる | 悪くなると感じる | |
2022年12月の景況感 | 9.1 | 44.4 | 46.2 |
2023年3月の景況感 | 13.1 | 45.9 | 40.3 |
2023年6月の景況感 | 16.6 | 50.5 | 32.4 |
※単位(%)※出典:※1(図表1参照)
こちらは、1年後の景況感に対して先行きを見通した回答結果となっています。結果は、将来のことを「変わらない」と回答している人が50.5%と多い状況です。この解答結果から判断できることは、景気は良くなっているものの、先行きに対して期待していない人の多さをうかがえます。
暮らし向きへの意識に対しての調査結果
日本銀行実施の生活意識の調査では、「ゆとりがあるかないか」を指標とした暮らし向きについても回答が集められました。
現在の暮らし向き
ゆとりが出てきた | どちらともいえない | ゆとりが無くなっている | |
2022年12月の暮らし向きへの意識 | 3.7 | 42.4 | 53.0 |
2023年3月の暮らし向きへの意識 | 3.8 | 39.7 | 56.0 |
2023年6月の暮らし向きへの意識 | 4.1 | 38.3 | 56.8 |
※単位(%)※出典:※1(図表5参照)
こちらの回答結果は、3つの調査時期で大きな変化はないものの、「どちらともいえない」という人が減った分、ゆとりを感じる人も感じない人も少しずつ増えています。この動きのままで双方が増え続ければ、暮らし向きの格差が広がるかもしれません。
収入に対しての意識を調査した結果
日本銀行が実施した意識調査では、収入への意識について次のような結果が出ています。
現在と1年前を比べた収入への意識
増えた | 変わらない | 減った | |
2022年12月の収入への意識 | 8.9 | 51.3 | 39.3 |
2023年3月の収入への意識 | 11.1 | 52.1 | 36.3 |
2023年6月の収入への意識 | 11.4 | 52.0 | 34.5 |
※単位(%)※出典:※1(図表6参照)
こちらは、現在の収入を1年前と比較したうえでの回答です。「収入が1年前と変わらない」と回答した人が半数という結果になっています。回答結果からは、収入が減少している人は全体の約3割のままです。
1年後と現在を比べた収入への意識
1年後の収入に対しては、どのような回答結果が出ているでしょうか。W年後と現在を比べた収入への意識は、次の回答結果となっています。
増える | 変わらない | 減る | |
2022年12月の収入への意識 | 7.6 | 53.9 | 37.7 |
2023年3月の収入への意識 | 9.1 | 57.2 | 32.8 |
2023年6月の収入への意識 | 10.2 | 57.0 | 31.1 |
※単位(%)※出典:※1(図表6参照)
収入に関しては、1年後も変わらないと感じている人が半数以上を占めています。現在の収入が減ると思っている人が3割ほどいる中で、半数以上の人が「変わらない」と思っている状況です。
支出への意識についての調査結果
日本銀行の調査では、支出に対しての意識調査も行われています。
現在と1年前を比べた支出への意識
増えた | 変わらない | 減った | |
2022年12月の支出への意識 | 52.7 | 30.1 | 16.2 |
2023年3月の支出への意識 | 60.2 | 26.1 | 12.7 |
2023年6月の支出への意識 | 59.4 | 27.1 | 11.9 |
※単位(%)※出典:※1(図表7参照)
支出への意識に関しては、「増えた」が圧倒的な多さで推移しています。最近の話題となっている物価高は、食費や光熱費などの高騰に直接影響をおよぼしています。そのため、支出を大きく左右するでしょう。
1年後と現在を比べた支出への意識
増やす | 変えない | 減らす | |
2022年12月の支出への意識 | 7.1 | 44.7 | 47.2 |
2023年3月の支出への意識 | 9.9 | 43.6 | 45.3 |
2023年6月の支出への意識 | 9.9 | 45.9 | 42.2 |
※単位(%)※出典:※1(図表7参照)
現在の支出が多ければ、1年後の支出を増やそうと考える人は少なくなるでしょう。ここで注目する点は、「減らそう」としている人と「変えない」という人が同じような割合で多いことです。支出への意識は、現在の物価動向が大きく影響していると考えられます。
物価への意識についての調査結果
日本銀行の調査では、物価への意識について次のような結果を公開しています。
現在と1年前を比べた物価に対する実感
かなり上がった | 少し上がった | ほとんど変わらない | 少し下がった | かなり下がった | |
2022年12月の物価への意識 | 52.7 | 41.6 | 3.6 | 0.7 | 0.7 |
2023年3月の物価への意識 | 62.8 | 31.7 | 3.2 | 0.6 | 0.7 |
2023年6月の物価への意識 | 66.3 | 29.2 | 2.1 | 0.5 | 0.5 |
※単位(%)※出典:※1(図表11参照)
現在の物価は、あらゆる分野で高騰していることが見受けられます。そのため、生活意識の回答でも、6割以上の人が「かなり上がっている」と回答している状況です。日々の生活から物価高を痛感していれば、支出も減らす方向に考えます。現状では、物価高騰が生活意識の印象として大きくなっていると判断できます。
地価の先行きについての調査結果
地価の先行きでは、どのような意識を持っているのでしょうか。日本銀行の調査で回答した人は、次のような意識を持っています。
先行きの地価動向に対する見方
上がる | 変わらない | 下がる | |
2022年12月の先行きの地価動向に対する見方 | 28.9 | 42.9 | 26.9 |
2023年3月の先行きの地価動向に対する見方 | 32.8 | 41.8 | 23.6 |
2023年6月の先行きの地価動向に対する見方 | 38.4 | 38.2 | 20.8 |
※単位(%)※出典:※1(図表16参照)
地価の意識では、「上がる」と感じている人が少しずつ増えてきています。その分、「下がる」と回答している人が減っている状況です。この地価の動向は、あくまでも予想であるため、上がることを願っている場合も考えられます。
生活意識アンケート調査から「現在のゆとり」を読み解こう
ゆとりある暮らしは、景況感があり収入も安定して増えていくことで支出の負担が軽くなると考えられます。今回紹介した日本銀行情報サービス局の生活意識調査結果からは、「収入が変わらないままで支出を減らしたい」という思いをイメージできました。
支出に対しては、物価高の影響が大きく、この先も物価高騰は生活水準に大きな影響をおよぼすと考えられます。
このような回答結果から「ゆとりある暮らし」を求めることは場違い的なイメージもあります。それは、一般的に労働収入だけを考えた場合です。多様性のある現代では、働き方も人それぞれではないでしょうか。
つまり、先行きが見えない現代では労働収入以外でも収入源をかけておくことも必要です。それは、現在の資産を生かした投資や貯蓄なども含まれます。たとえば、本アンケート調査の回答結果で多かった「地価が上がる」という見通しに対して、チャンスだと思えば上がる前の購入も考えられるでしょう。
ただし、投資や資産運用は知識や経験を持っていないと、判断に苦しむ場合もあります。まずは、専門家の見解を参考にしてみてはいかがでしょうか。
【出典・参照元記事URL】
※1:日本銀行情報サービス局「生活意識に関するアンケート調査|第94回<2023年6月調査>)の結果」https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2307.pdf
※2:日本銀行「調査・研究」https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab21j02.htm